本日平成28(2016)年10月1日から
全都道府県で1ヶ月以内に「最低賃金」が順次改定されます。
最低賃金とは
名前のとおり「賃金の最低額」。
「最低賃金法」という法律に定められていますので、この最低額以上を支払わなければならないという制度になっています。
そのため、時給で働く非正規労働者の賃金上昇に大きな影響を与えるといわれています。
ちなみに、ボーナスや残業代には適用がありません。
最低賃金改定
全国加重平均 823円(25円UP)
全都道府県が700円台以上となりました。
最低賃金の区分は、2種類あります。
・地域別 都道府県ごとに
・特定産業別 特定の産業を対象に
地域別<特定産業別、と特定産業別の方が高い水準で定められていますが、
両方の基準が同時に適用される労働者には、「高い方」の賃金額が適用されます。
都道府県別に最低賃金を見てみよう
高い順番
1. 東京 932円
2. 神奈川 930円
3. 大阪 883円
低い順番
1. 沖縄・宮崎 714円
2. 鳥取・高知・佐賀・長崎・大分・鹿児島 715円
3. 青森・岩手・秋田・徳島 716円
厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
このところ毎年改定が続けられてきています。
10年前の、平成18年10月1日に改定された当時の最低賃金額を見てみましょう。
・東京 719円
・神奈川 717円
この10年間の変化です。
私が住んでいる神奈川県は、930円-717円=213円UP。
東京も同じく213円UPです。
全国加重平均 (H18)673円—–>(H28)823円(150円UP)
最低賃金未満だと、企業に罰則規定あり
「最低賃金法」で罰則規定があります。
最低賃金法は、最低賃金未満で人を雇うことを禁じています。
使用者が最低賃金を支払わない場合には、下記のように罰則があります。
・地域別最低賃金額以上を支払っていない場合 50万円以下の罰金
・特定産業別最低賃金額以上を支払っていない場合 30万円以下の罰金
経営者のみなさん、最低賃金の金額に気をつけて!
開業したてのみなさん、知らないことも多いです。
時給設定、気を付けましょう。
中小企業の経営者から見ると「人件費の上昇はキツい。」
経営がより苦しくなるといわれます。
飲食・小売・介護・保育・清掃・その他サービス業など労働集約型事業では、なおさらです。
大切なこと。
・個々の従業員の働きに対して正当な評価をすること
・その働きに見合った適正な賃金を支給すること
企業の売上獲得には、社員の働きは欠かせません。
企業の成長・発展のためにも、従業員とともに生産性を高め、効率のよい経営を目指していきましょう。
●給与計算—>源泉所得税の変更
中小企業のみなさんにとっては、経営者として支給する給与に直接影響します。
最低賃金以上の時給を設定していれば何も問題がありませんが、
ぎりぎりに設定している場合には留意しましょう。
金額によって、差引く源泉所得税の金額にも影響します。
うっかりしていて、「今月分、計算間違ってると思うんですけど…。」などと
従業員から指摘など受けて、遡って差額を計算し直し…なんてことになりませんように。
●求人広告—>記載の見直し
人手不足に陥っている会社にとっては、時給は人材の確保にも大きく影響するところです。
求人広告を出している会社は、最低賃金の改定の影響があります。
同業他社の時給設定などの動きも見ながら、対応していきましょう。
他国は「最低賃金」どうやって決めている?
最低賃金の定め方は、国の考え方によって違うようです。
(出典)対談 最低賃金を考える、大竹文雄、橘木俊詔
1. 国が最低賃金法を決めて、最低額を保障
・・・フランス、オランダ、イギリス、アメリカ(州)
2. 労使に任せる
・・・ベルギー、デンマーク
3. 産業別の団体交渉によって決める
・・・オーストリア、ドイツ、イタリア
「ヨーロッパ流」
職業や勤続年数・経験を基礎として、それぞれの業種団体で最低賃金を決める。
もともと18世紀後半から産業革命時代に労使間が対立をしたことがきっかけとなり、
労働者の最低限度の生活水準を保つために、最低賃金法が導入されることとなったようです。
産業革命がおこったヨーロッパが、最低賃金の考えのもととなっています。
日本は、国が主導して、地域別にまた特定産業別に法律を定めています。
基本は地域別に最低額を定める1番の考え方となっています。
アメリカも、国より州主導で州別に最低賃金が定められていますので、1番の考え方です。
2022年までに段階的に引き上げて時給$15にしようという運動が広まっています。
2016.01.01現在 USA 国の法律で定める最低賃金は、$7.25です。
州ごとの最低賃金地図はこちら (出典)”TIME”より
世界的に高い最低賃金を規定している国は、下記の通り。
ルクセンブルグ$11.46、オーストラリア$11.15。
(出典)”THE DAILY SIGNAL”
WSI Institute of Economic and Social Research’s, 2016 Minimum Wage Database.
影響がある人は?—「最低賃金」あたりで働いている人
ズバリ、若者・パート主婦 の2つの層といわれています。
平成27年7月23日 内閣府「最低賃金について」資料より
若者の男性
29歳未満の男性が10%ほど。男性は全体の3割弱と多くはない。
既婚女性・パート主婦
非正規社員、時給で働く、短時間労働者とは、50%近くが30~59歳の女性となっています。
全体の7割以上が女性です。
親がいるでしょ、夫がいるでしょ
若者には、いっしょに生活する親がいるし、既婚女性には、いっしょに生活する夫がいる。
時給が最低賃金であったとしても「生活には困っていない。」という実態があります。
そのため、高いとはいえない「最低賃金」の水準が続けられてきたといえます。
最低賃金を上げるメリットとデメリット
いろいろな有識者の方が議論をされています。。。
○メリット
・【労働者】低賃金労働者の所得増
単純に低賃金労働者の賃金を増やすことができる。
(全国加重平均額で計算すると)823円×40h/週×52週/年間=1,711,840円
・【企業】より良い人材の確保
人手不足に悩む成長産業にとっては、より良い人材が確保できるチャンスとなる可能性も。
・【国家】「デフレ脱却・経済再生」へ
賃金増→消費増→経済再生へ。消費が増えることを期待されての改定です。
・【国家】衰退産業→成長産業への人材移転
経済成長が臨める産業育成に人をよせる契機となる可能性も。
成長産業で働くための人材育成支援策がセットで必要。
○デメリット
・【労働者】雇用機会の損失
生産性が高くない仕事に従事している労働者が解雇され、失業する可能性がある。
・【企業】生産性向上は必須
中小零細企業にとって、店じまい、事業の縮小、従業員の解雇も検討しなければならない。
・【国家】消費に回らず、貯蓄へ?
低賃金で生活を賄っている人が世帯主であれば、多くなった賃金で家計は助かる。
稼いだ所得はそのまま消費にまわる。
しかし、最低賃金に影響がある人が「生活に困っていない」若者や既婚パート主婦の場合、
期待する消費にまわらず、貯蓄になる可能性があるとの指摘が。
政府のめざす「デフレ脱却・経済再生」にさほど効果がないことも。
まとめ
最低賃金改定は、国のいろいろな経済政策に関連してきます。
雇用には直接大きな影響がありますので、オートメーション化が進む可能性も。
先日、ネコの手も借りたいほど忙しいアメリカのバーテンダーが
カウンターでまだかまだかと食べ物を待ってる私たちに笑顔でこう言いました。
「10年後にはバーテンダーの仕事なんて、ぜーんぶロボットに切り替わっちゃうんだ。」
(忙しいといってる今が華なのさ!)
今後10年以内には、一気に機械オートメーションの波がやってくるのでしょうか?