日本では「終活」といって、いつか自分が逝くときのことを考えて、遺された人に自分の意思をきちんとわかるようにしておこうと、エンディングノートや遺言を準備する行動に意識が高まっています。
明日のことはだれにもわかりません。
財産があってもなくても、自分の最期を考えてプランニングしておくことは大切ですね。
しっかり生きて、美しく逝く。
いまや海外に住んだり結婚したり投資したり…と、海外と関係がある人も多くなりました。
・海外に財産がある
・海外に家族がいる
国をまたぐと現地の法律を適用したりといろいろと複雑になってきますね。
人生の最期に関係する税金を見ていきましょう。
まずは、私たちの日本の相続税のことを、知っておきましょう。
そして、この記事の終わりに、アメリカの遺産税についても触れていきます。
アメリカの法律について私は専門家ではありませんので、参考概要情報にとどめていただき、
個人への税法の適用、Estate Planning、Trust等につきましては弁護士等にご相談ください。
相続の用語
お亡くなりになった人を「被相続人」、
遺族で財産を受けとる側の人を「相続人」といいます。
1. 日本の相続税
上記は、課税対象となる財産をあらわす表です。
原則として、亡くなった被相続人の住所が日本にあれば、その遺産は相続税の対象です。
被相続人と相続人の「居住形態」、「国籍」が関係します。
・被相続人・・・居住形態
・相続人・・・・居住形態、国籍(※重国籍者は「日本国籍所有者」に含まれる)
相続税の申告・納税義務者
遺産をもらった「相続人」が、申告・納税義務者となります。
・無制限納税義務者
上記表で、財産が《「すべて課税」ピンク色》に該当した「相続人」
基本、被相続人の住所が日本にあれば、取得した遺産すべてが課税財産となります。
下記の「制限納税義務者」に該当しないかぎり、相続財産のすべてが課税対象となります。
相続財産がどこにあるか(日本国内にある、海外にある)は、問いません。
無制限納税義務者は、
①日本に住む「居住無制限納税義務者」
②海外に住む「非居住無制限納税義務者」に、区分されます。
・制限納税義務者
上記表で、財産が《「日本国内財産のみ課税」薄青色》に該当した「相続人」
被相続人が海外居住(住所が5年超日本にない)、
かつ、相続人も海外居住(住所が5年超日本にない)、日本国籍の場合
被相続人が海外居住(住所が5年超日本にない)、
かつ、相続人も海外居住、外国籍(日本国籍を有しない)の場合、
つまり、被相続人・相続人、双方が長期海外居住で、上記条件にあてはまれば
日本国内財産のみ課税対象となります。
相続税の納税地
「被相続人」(亡くなった人)の住所地の所轄税務署に申告します。
「被相続人」(亡くなった人)が海外居住で日本にない場合は、どうするのでしょうか。
・相続人が日本に住んでいる「居住無制限納税義務者」である場合は、
→ 相続人の住所地
・相続人が海外に住んでいる「非居住無制限納税義務者」「制限納税義務者」である場合は、
→ 相続人自ら「納税地」を定める
その申告がない(無申告)ときは、国税庁長官がその納税地を指定・通知する。
相続税の計算のしかた
1. 財産(評価額)+ 相続時精算課税適用財産 - 債務・非課税財産
+ 相続開始前3年以内の贈与財産= 正味の財産額
財産はそれぞれの資産の種類に応じて評価し、合計します。
2. 正味の財産額 - ★基礎控除額 = 課税財産額
★基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円×法定相続人数
●ここまでの計算で課税財産額があるかたは、相続税の申告書を提出する義務があります。
基礎控除額ですべて差し引くことができ、課税財産額がなければ申告する必要はありません。
●注意!
土地について「小規模宅地の特例」などを適用することにより、課税財産額が基礎控除額以下になる場合には、相続税の申告書を提出する義務があります。
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3. 課税財産額 × ★法定相続分割合 × ★税率
★法定相続割合は、法律で決まっています。
上記2「課税財産額」を、法定相続分に応じて分けたと仮定し各人の相続税を計算します。
★税率
(出典)国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm
4. 相続税の総額
各相続人について、上記3税額の計算をして、合計する。
5. 納付税額の算出
各相続人の税額 - ★税額控除 = 納付税額
上記4「相続税の総額」を実際に取得した財産価額で按分する。
=それぞれの相続人が実際に相続した財産の大きさに合わせて、税額を計算する。
★税額控除
・配偶者控除
(配偶者の法定相続分 または 1億6千万円まで いずれか多い金額)
・外国税額控除
(海外所在相続財産に、外国で相続税に相当する税金が課税された場合)
・贈与税額控除、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除など
2. アメリカの遺産税
被相続人が持っていた遺産に対して「遺産税」が課税されます。
国籍・居住形態区分により、課税資産の範囲や税額控除の適用が異なります。
・米国市民(U.S. Citizens) アメリカ国籍保有者
・米国居住者 (U.S. Residents)
・米国非居住者 (Nonresident Noncitizens)
課税遺産額
★遺産総額-負債等-州の遺産税+生前贈与=課税遺産額
★遺産総額(Gross Estate)には、すべての財産が含まれます。
死亡時の時価で評価されます。
遺産税・贈与税共通 統一移転基礎控除額
日本と比較すると、大きい基礎控除額。
遺産が5ミリオンドル(5億円)ぐらいまでのほとんどの中流のご家庭では、
税金を心配する必要がないでしょう。
基礎控除額は、(2016)US$5,450,000
= 5億4,500万円—(1$=100円)円換算
配偶者控除
「米国市民」である「配偶者」が遺産を取得した場合のみ、
遺産の金額が基礎控除額(2016)US$5,450,000を超えていたとしても
金額に制限は設けず、配偶者控除が適用できます。
原則「米国市民」である「配偶者」が遺産を引き継ぐ場合には、
遺産税がかからないしくみになっています。
相続・贈与を統合した税制
アメリカの遺産税は、その人の一生にわたる財産の移転の総額に課税を行う考え方なので、
・贈与時(生きている人 → 生きている人へ)財産が移転したとき
・相続時(亡くなった人 → 生きている人へ)財産が移転したとき
相続・贈与を統合した税制になっています。
日本の税制のように、遺産をどう分けるか、法定相続人の数などには関係なく、
移転する財産の大きさによって税額が異なります。
税率
18%~40%までとなっています。
相続税・贈与税のついての基礎控除や税額表は、同一のものを使用します。
(下記参照:Table Aー”Unified Rate Schedule” 遺産税・贈与税にかかる統一税額表)
例えばのお話で、単純に(1$=100円)円換算して考えてみましょう。
下の税額表に当てはめて計算してみます。
・課税遺産 US$10,000,000(10億円) だとすると、
・税額 US$3,945,800 (3億9,458万円)—約4割になりますね。
遺産税・贈与税にかかる統一税額表
(出典)”Instruction for Form 706″ https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/i706.pdf
3. 日本の相続税とアメリカの遺産税
お国が違えば、相続についての法律(税法)も違います。
日本———-遺産取得税方式
(法定相続割合で遺産を取得したとして、相続人の取得した財産に課税する)
アメリカ—–遺産課税方式
(だれが遺産を取得したとは関係なしに、被相続人が持っていた財産に課税する)
外国と日本の両国において課税される場合、外国で納めた税額がある場合には、
外国税額控除を使用し、二重課税された税額を調整することとなります。
日本とアメリカ間には、相続税についての「日米租税条約」の規定があります。