Q. 母ががんで亡くなりました。母が亡くなったのは、5月10日。
亡くなる約1ヶ月前の 4月1日、
息子(次男)の私に「どうしても自宅を引き継いでほしい」といい、
母名義→息子名義へ
1千万円の自宅土地(栃木県)を生前贈与しました。「相続時精算課税」を利用すれば税金ははかからない
と知人に勧められました。
そこで贈与契約書を作り、贈与しました。
土地の所有者は私になっています。登記も無事に完了しています。母の納骨も無事に終わって、ひと段落ついたところですが、
この贈与について、どんな書類を提出すればよいですか?母が亡くなったので、私は相続税の申告書の提出が必要ですか?
母が亡くなったときに持っていた財産は、銀行預金500万円のみ。
他にはありません。
相続人は、父、長男、次男(わたし)の3人です。
この質問には、2つの税目(ぜいもく)の内容が入っています。
それぞれの税金について、考える必要があります。
1. 生前贈与・・・・・・・・・・・・・贈与税 「相続時精算課税」
贈与者: 母
受贈者: 次男(わたし)
2. 亡くなった人の財産を引き継ぐ・・・相続税
被相続人: 母
法定相続人: 父、長男、次男(わたし)の3人
1. 贈与税:もらった人が申告・納税
個人から財産をもらったときにかかる税金です。
申告・納税義務者:受贈者(財産をもらった人)
申告書の提出先: 受贈者の住所の所轄税務署です。
贈与税の課税方法には、以下の2種類があります。
①暦年課税 基礎控除額 110万円
1年間にもらった財産の合計額が、基礎控除額110万以下であれば、
贈与税はかかりません。申告は不要です。
②相続時精算課税 特別控除額 2,500万円
相続時精算課税とは?
原則として60歳以上の父母または祖父母から
(贈与の年の1月1日において)20歳以上の推定相続人である子または孫に対して
財産を贈与した場合に、選択できる「贈与税」の制度です。
贈与税の額
(1年間のその贈与者からの贈与価額合計-★特別控除額)×20%
★特別控除額
2,500万円 (限度額2,500万円に達するまで、複数年にわたり利用できる。)
特別控除額の範囲内で贈与が行われれば、贈与税はかかりません。
精算って、どんなふうに?
相続時精算課税を選択した贈与者が亡くなった場合には、
相続税の計算上、相続財産に(+)贈与した財産の価額(贈与時の時価)を加算します。
生前には贈与税が課されないように優遇するが、相続時には足し直す。
文字通り「相続のときには精算しますよ」という制度です。
相続時精算課税を選択したいとき
「相続時精算課税選択届出書」を提出。
一度選択すると「相続時精算課税」は、
その贈与者が亡くなるまで続く。受贈者(子または孫)が
この制度を利用しての最初の贈与があった年の翌年に、
「贈与税の申告書」・「相続時精算課税選択届出書」を提出します。なにを?⇒⇒⇒「贈与税の申告書」・「相続時精算課税選択届出書」
いつまで?⇒⇒ 贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日の間
どこに?⇒⇒⇒ 受贈者(贈与を受けた人)の住所の所轄税務署
添付書類⇒⇒⇒ 受贈者の戸籍謄本または抄本A. この質問のケースでは、
「相続時精算課税」を選択すれば、
贈与税がかからずに贈与することができます。母→次男へ1千万の自宅土地を生前贈与。
贈与者:母
受贈者:次男
※注意
「相続時精算課税制度」はいったん選択すると、その後贈与者が亡くなるまで継続適用。
暦年課税に変更することはできない。
「相続時精算課税」の贈与者が、贈与の年に死亡。
その場合はどうなる?
本質問のとおり、贈与者(母)が贈与した年の中途に死亡した場合、
「相続時精算課税」の適用を受けようとするときは、通常とはちがう手続となります。
A. 贈与税申告書は、提出不要になるが、
「相続時精算課税選択届出書」は提出する。提出先税務署・提出期限が通常とはちがう
なにを?⇒⇒⇒「相続時精算課税選択届出書」
いつまで?⇒⇒ 次の①または②のいずれか早い日までが期限となり、
①贈与税の申告書の提出期限…(通常)贈与の翌年の3月15日
②相続税の申告書の提出期限…相続開始の日の翌日から10か月以内
どこに?⇒⇒⇒ 贈与者の住所の所轄税務署ご質問のケースでは、
「相続時精算課税選択届出書」を、
(相続開始の日の翌日から10か月以内の)3月10日までに、
贈与者(母)の住所の所轄税務署に提出することになります。
2. 相続税
「相続時精算課税」を初めて選択した同じ年に母が亡くなった。贈与—>相続税?
A. 贈与の「精算」時期=贈与者の死亡時。
相続税の申告が必要かどうか検討しよう。
ご質問のケースでは、「相続時精算課税」を利用して贈与した1千万円の土地を、
母の遺産に含めます。そのうえで、相続税の申告書を提出する必要があるかどうか考えます。
相続の用語
相続税は、
亡くなった人(被相続人)から財産をもらったときに、財産をもらった人にかかる税金です。
相続税申告・納税義務者: 相続財産を取得した人
相続税申告書の提出先 : 被相続人の住所の所轄税務署
相続税はどのような財産にかかる?
相続・遺贈によって取得した財産にかかります。
相続税の計算をするときに
「相続時精算課税」を選択して贈与によって財産を取得した人は、
「相続時精算課税」を利用して贈与した価額を遺産に加えます。
3. わたしは相続税の申告をする必要があるか?
A. 被相続人(亡くなった人)の
持っていた財産をすべてあらいだそう
財産(評価額)
+ 「相続時精算課税」適用財産
- 債務・非課税財産
+ 相続開始前3年以内の贈与財産
——————————————–
= 正味の財産額
A. ★相続税の基礎控除額
=3,000万円+600万円×法定相続人数「正味財産額」-「★基礎控除額」= ??
上記を計算してみた結果、
正味財産<基礎控除…相続税の申告は必要ない
正味財産>基礎控除…相続税の申告が必要
この質問のケースについて見てみよう。
●「遺産にかかる基礎控除額」は、⇒⇒⇒ 3,000万円 + 600万円×3人 =4,800万円
●被相続人(母)の「正味財産」⇒⇒⇒ 下記のとおり、合計1,500万円。
・銀行預金 500万円
・相続時精算課税を使って贈与した土地 1,000万円
正味財産が、基礎控除額の範囲内におさまります。
すべての財産が基礎控除額以下となるため、相続税の申告はいりません。
参考
もう少し詳しい「相続税の計算のしかた」については、こちらをどうぞ。
~●税chie● 知っておきたい日・米の相続税~