Yokohama Jail Tour 横浜矯正展

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すっきり広がる青空。
秋晴れの土曜日の昼下がり、横浜刑務所で開かれた「横浜矯正展」に行ってきました。

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~受刑者が改善再生を目指し、心を込めて作り上げた作品をご覧ください~

刑務所で作業して製作された品物が販売されています。
一度行ってみようと思いながら、なかなか足を運ぶ機会がありませんでした。
上大岡から散歩がてら、ぶらぶらと歩いて15分ほどの場所。(港南区港南2丁目)

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うわ~こんなに人が来ているの~!
あとからあとから出入りする人々。大変なにぎわいに驚きました。
屋台のように出店があるし、お祭りのよう。
隣の公園では「こうなん子どもゆめワールド」というイベントも同時開催されていました。

たんすや机、花瓶台、ソファーといった家具、バッグ、靴などといった日用品がずらり。
製麺所で作られたきつねうどんが200円で長蛇の列。
ラーメン、牛丼、地元のお店のケーキ、農産物、南部市場からも出店があって、
これは祭りのよう。
ちょうどお昼時、みなさん座ってお食事をされている人が多かったです。

やっぱりめったにない機会だから、塀の中を見学

刑務所内見学の列に並ぶ

午前と午後に時間帯を分けて、「所内見学」が実施されているとチラシに記載がありました。
所内見学が大人気!
「大勢の人が並んで待っているため、特別に午後の回の実施時間を10分早めます。」と
アナウンスが聞こえてきました。
わたしも見学をしたいと来てみたひとりですが、並んで待つとは思っていませんでした。

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並ぶほどなら諦めようかな・・・と思っていたら、
「めったにない機会ですから、この機会にぜひ・・・。」との言葉が。
やっぱりせっかくだから見て帰ろう。列の最後尾に加わりました。

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もうすぐ中へ。順番が近づいてきました。
やっぱり塀は高いですね。

グループごとに見学

中へ入ったら、まずは入口で、自分の手荷物をロッカーに預けます。
ある人数のグループごとに入場。
職員がわかりやすく説明をしながら各作業所を見学していきます。

まずは、横浜刑務所の歴史から。
1855年の下田から、1936(昭和11)年横浜市港南区に移設されたとのこと。
下田港開港の歴史に遡る…160年ほどの歴史があるとのこと。
明治維新より前から。そんなに長い歴史があるんですね。

見学したところ

・木工製作
・印刷物製作
・麺工場(部屋の前のみ)
・金属・溶接工場
・洗濯ばさみ製作
・入浴所

工場というよりは、ひろーい学校の校舎のようだと感じました。
中に入ると理科の実験室のような部屋で、機械などが整然と並んでいて、
作業台や机の上には、色のついたキャップ帽子が置かれていました。
立って作業をする者、座って作業をする者と、帽子の色が分かれているそうです。

家具を作っている木工所は、大きな機械が並んでいます。
木のぬくもり。木のにおい。こども向けの積み木のおもちゃが展示されていました。
いいですね。安心の質感です。

印刷物や紙製品を扱う工場。製作品が並べられていました。
各種紙製品、名刺、製本された町内会名簿も
その陳列棚の上には、トラの刺繍入りソフトボール大会優勝旗が壁に飾られていました。
こういったリクレーションもあるんですね。

洗濯ばさみを製作する作業所には、畳が敷かれており、各人にちゃぶ台のような机が。
正座? あぐら? こんなところで作業していたら、足が痛くなりそうだなぁ
と想像していたら、軽い簡単な作業は老齢受刑者向けとのこと。
転倒してもケガをするおそれがないので椅子ではなく畳の上で作業をしているそう。

金属・溶接工場では、中華鍋が作られているそう。
小さな工業用製品部品やコンピュータハードディスクも展示されていました。

入浴所は40人ほどずつ、15分。冬は週に2回、夏は週に3回。
整然と風呂椅子と洗面器が並んでいます。
すべてのシャワーに番号がついています。
番号がはっきり、そこがふつうの銭湯とは違うものを感じます。

日中過ごす作業棟。昼食も作業棟でとって、仕事が終わると居住棟に戻る。
仕事をする作業棟と寝起き生活する居住棟。
廊下でつながっていて、その間に入浴所がある。
土日は仕事は休みとのことなので、土曜日は受刑者は思い思いに過ごしているはず。
ひとでいっぱい賑わう音は彼らに聞こえているのだろうか。

居住棟は入ることが出来ませんでした。
一人部屋と共同部屋があるそうです。
人によって、テレビのある部屋とない部屋がある。
新聞などは工場で読めるので社会の様子がわかります。
塀にそって桜の木が植えてありました。
春になると桜が満開になって、これで四季を感じるそうです。

横浜の名物は、製麺工場

横浜刑務所では全国的に珍しく飲食物を扱っている工場があります。
ここの麺製造所で作られたうどんを買ってきました。
裏を見ると、製造者の記載は「横浜刑務所」となっています。

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他の刑務所で製作されたものも販売されています

お土産にこんなものを買ってきました。

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281105jail-tour8動物柄のポーチとブックカバー

塀の中も時代を反映している

刑務所も多国籍社会

横浜刑務所、ほかと比べると外国人受刑者も多いとのことです。

平成27(2015)年 横浜刑務所 1042名収容
うち 141名は外国籍受刑者。
数の多い順は、中国、朝鮮・韓国、イラン…

刑務所も例外なく高齢社会に

近年、刑務所施設の運営に係る国家予算「矯正関係費」は増加傾向にあるようです。

平成27(2015)年予算額(法務省
矯正関係費 2317億円

目標は再犯防止

【数値目標】
2020年までに帰るべき場所がないまま刑務所から社会に戻る者の数を
3割以上減少させる。
(出典)法務省HPより

犯罪率のきわめて少ない国、世界一安全な国として日本は有名ですね。
オリンピックの2020年までには、再犯者を減らして更生させたいと国は目標をたてています。

社会の高齢化も刑務所も例外ではないということですね。
高齢者・障害者といった自立が困難な受刑者の割合が増えているそうです。
刑務所での医療費も増加傾向にあるとのこと。

Japan’s Prisons Are Turning Into Nursing Homes

「日本の刑務所が介護施設化している」との衝撃的な見出しの英文記事を見つけました。
(出典)http://www.bloomberg.com

たとえば再犯で1000円の弁当を盗んだとしたら…
万引きのような軽犯罪で5年間刑務所に居たとしたら…
5年間で1600万円の費用がかかることに…!(1年間320万円)

刑務所とはいえ、屋根の下で仕事も食事も与えられる。
病気になったら医療費で対応してもらえる。
塀の中の方が安心。たった一人で社会で孤立するより居心地がよくなってしまうのでしょう。

日本は罪を犯した人が少ないだけに、その後社会で孤立しやすいといわれています。
再犯者は特に、犯罪を繰り返すにつれて親族等との関係が疎遠になる、
社会に戻っても孤独で支える人もいない、仕事も見つからない、生計がたてられないために、また罪を犯して刑務所に戻っていく。そのうえ、高齢者、病気がち、障害者…。
むずかしい社会問題がここにありますね。

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